チームで挑んだ、ある家族との1年間

野口 直央

からふるKids野田second
エリアMGR兼施設管理者

2016年入社

最初に向き合ったのは、お母さんの涙でした

私が特に心に残っているのは、4歳の男の子とお母さんを支援した時のことです。その子は3人兄弟の末っ子で、人を叩いたり、食事中に容器を投げたりしてしまい、幼稚園を休園していました。お母さんは、上の2人の子育ては問題なくできたのに、この子だけは違っていたため、戸惑いや不安で初めての面談の時に涙を流されました。そこで私たちが始めたのは、集団の中ではなく、1対1で関わって、その子の行動の原因を探ることでした。衝動的な行動が起きた時、何が嫌だったのか、何に困っていたのか、その子が上手に話せない分、私たちが「嫌だったんだね」「悲しかったんだね」と気持ちを代弁する。そうやって少しずつその子のことを知っていくと、心の奥にある「お母さんに褒められたい」という寂しさに気づいたのです。

チーム全体で取り組んだ「褒め作戦」

そこで私たちが提案したのは、送り迎えの際に行う「褒め作戦」でした。お迎えの時に、私たちが少し大げさなくらいその子を褒め、お母さんにも一緒に「すごいね」「よく頑張ったね」と声をかけてもらうようにしたのです。最初はお母さんも照れた様子でしたが、繰り返していくうちに、だんだん自然に褒められるようになっていきました。この取り組みはチーム全体で進め、その日の担当スタッフが変わっても、一貫した対応ができるように、毎日欠かさず情報を共有しました。成果が見え始めたのは約3か月後のことです。食事中に物を投げたり、お友達に手を出したりする行動がなくなり、集団で過ごせるようになりました。そして初回の面談から約1年後、ついにその子は幼稚園に復帰。今では友達と楽しく過ごし、お母さんも家族でお出かけできる余裕が生まれています。それに伴い、当施設への利用頻度も減ったため、私も嬉しい反面、少し寂しい気持ちが残りました。でも、「支援が必要なくなること」こそが私たちの支援の目標だと信じています。この経験を通じて、親子の笑顔を取り戻すお手伝いができたことは、何よりの喜びでした。

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